この記事の要点
- 夜になるとズキズキと歯が痛み、眠れないほどになる場合、最も多い原因はむし歯が歯の神経(歯髄)まで進んで炎症を起こしている状態です。何もしなくても痛む、温かいもので痛みが長く続く、という症状は神経を残せない段階に進んでいる可能性があります。
- 今夜できることは、市販の痛み止めを用法・用量どおりに使う、痛む側で噛まない、患部を清潔にして冷やすことです。飲酒・長風呂・激しい運動は痛みを強めやすいので避けてください。痛み止めで痛みが引いても、原因は治っていません。
- 翌日〜数日以内に歯科医院を受診してください。顔が腫れてきた、発熱がある、口が開きにくい、飲み込みにくいといった症状がある場合は、夜間でも救急の受診が必要です。
宮崎駅近くのクレアデンタルクリニック宮崎駅、院長の野海です。「昼間は我慢できたのに、夜になると歯がズキズキして眠れない」というご相談は、急患として来院される方に大変多い症状です。この記事では、夜に強くなる歯の痛みの原因、神経が残せる段階かどうかの見分け方、今夜を乗り切るための対処と避けたいこと、受診の目安、そして歯科医院での治療の流れを歯科医師の立場から説明します。
夜になると歯がズキズキ痛むのはなぜか
夜に強くなる歯の痛みの多くは、むし歯が歯の内部にある神経(歯髄)に達し、炎症を起こしている「歯髄炎(しずいえん)」が原因です。日本歯科医師会の解説でも、何もしなくてもズキズキする歯の痛みの代表的な原因として、むし歯が進行して歯の神経が炎症を起こしているケースが挙げられています[1]。歯の内部は硬い組織に囲まれた狭い空間なので、炎症で腫れた神経の圧力が逃げ場を失い、拍動に合わせた強い痛みとして感じられます。
夜に痛みが強く感じられる理由は一つではありません。横になる姿勢、日中の気が紛れる刺激がなくなること、昼間に飲んだ痛み止めの効果が切れる時間帯であることなどが重なり、同じ炎症でも夜のほうがつらく感じられやすくなります。「夜だけ痛むから軽い」とは限らず、むしろ自発的に痛む段階は進行している可能性が高いとお考えください。
歯髄炎以外にも、夜にズキズキする痛みを起こす原因があります。
- 根の先の炎症(根尖性歯周炎):神経が死んだあとに細菌が根の先に広がり、膿がたまった状態です。歯が浮いた感じ、噛むと響く痛み、歯ぐきの腫れを伴うことがあります[1]。
- 歯のひび・破折:ひびから細菌が入り、神経の炎症を起こします。噛んだ瞬間に鋭く痛むことが特徴です[1]。
- 親知らず周囲の炎症:奥の歯ぐきが腫れて痛み、口が開きにくくなることがあります。
- 歯周病による膿(歯周膿瘍):歯ぐきが大きく腫れ、押すと膿が出ることがあります。
- 歯が原因ではない痛み(非歯原性歯痛):片頭痛や群発頭痛の症状の一つとして歯痛が生じることがあり、歯の神経の炎症と似ているため見分けが難しいとされています[2]。この場合は歯の治療では改善しません。
どの原因かはご自身では判断しにくいため、痛みの出方を覚えておき、受診時に伝えていただくことが診断の助けになります。
痛み方で分かる、神経を残せる段階かどうか
歯髄炎には、適切な治療で神経を残せる可能性がある「可逆性」と、神経を取る治療が必要になる「不可逆性」があります。MSDマニュアル家庭版では、冷たいものや熱いもの、甘いもので刺激を与えたとき、刺激を取り除いてから1〜2秒以内に痛みが消えれば歯髄は温存できる状態(可逆性歯髄炎)、刺激を取り除いた後も痛みが続く場合や自然に痛み出す場合は温存できない可能性がある状態(不可逆性歯髄炎)とされています[3]。
| 痛みの特徴 | 考えられる段階 | 一般的な治療の方向 |
|---|---|---|
| 冷たいものがしみるが、離すと1〜2秒で消える | 可逆性歯髄炎、または知覚過敏・初期〜中期のむし歯 | むし歯を取り除いて詰め物で修復し、神経を残せる可能性がある[3][4] |
| 刺激がなくてもズキズキ痛む、温かいもので数分痛みが続く、夜に眠れない | 不可逆性歯髄炎の可能性 | 根管治療(神経の治療)または抜歯が必要になることが多い[4] |
| 激しく痛んだあと急に痛みが消えた | 神経が壊死した可能性 | 痛みが消えても感染は続いており、根の先の炎症へ進むため治療が必要 |
| 噛むと響く、歯が浮いた感じ、歯ぐきが腫れている | 根尖性歯周炎、歯周膿瘍など | 原因に応じて根管治療、歯周治療、切開排膿など |
MSDマニュアルの専門家向けの解説では、不可逆性歯髄炎では痛む歯を特定しにくいことがあるとも記されています[4]。「上の歯か下の歯か分からない」「頬全体が痛い」という場合も珍しくありませんので、無理に特定しようとせず、歯科医院での検査にお任せください。
今夜を乗り切るためにできること
歯科医院が開くまでの間に、ご自宅でできる対処は限られますが、痛みを軽くし、悪化を防ぐために次のことをおすすめします。日本歯科医師会の「お口の119」でも、痛む側で噛まない、患部を清潔にする、つらければ痛み止めを飲む、安静にして患部を冷やす、といった対処が示されています[1]。
- 市販の痛み止めを用法・用量どおりに使う:ロキソプロフェンやイブプロフェン、アセトアミノフェンなどの市販薬は、歯髄炎の痛みをある程度抑えられます。説明書の量と間隔を守り、空腹時を避けてください。胃潰瘍、腎臓や肝臓の病気、ぜんそく、妊娠中、ほかの薬を服用中の方は、薬剤師に相談してから使ってください。
- 痛む側で噛まない・患部を清潔にする:食べかすがむし歯の穴に入ると痛みが強まります。やわらかい歯ブラシで優しく磨き、ぬるま湯でゆすいでください[1]。
- 頬の外側から冷やす:保冷剤をタオルで包み、頬の外側から当てると楽になることがあります[1]。氷を直接当てたり、長時間冷やし続けたりしないでください。
- 頭を少し高くして休む:横になると痛みが強まる方は、枕を高くしたり上体を起こしたりすると楽になる場合があります。
避けたいこと
- 飲酒・長風呂・激しい運動:血行が良くなると痛みが強まりやすくなります。シャワー程度にとどめてください。
- 痛む歯で硬いものを噛む、熱いもの・冷たいものを飲む:刺激で痛みが長く続くことがあります。
- 痛み止めを歯や歯ぐきに直接当てる・塗る:粘膜を傷めるおそれがあります。薬は必ず飲んで使ってください。
- 痛み止めを飲み続けて受診を先延ばしにする:日本歯科医師会の解説にもあるとおり、痛み止めの薬だけでは治りません[1]。痛みが引いている間に炎症は進みます。
受診の目安と緊急性
夜間に自発的な痛みがある場合、翌日か、遅くとも数日以内に歯科医院を受診してください。「歯がズキズキする」は、日本歯科医師会が「放っておかないで」と呼びかけている受診すべき症状の一つです[5]。
次の症状がある場合は、歯だけの問題にとどまらず感染が広がっている可能性があるため、夜間や休日でも救急の医療機関(休日・夜間の歯科診療窓口、または口腔外科のある病院)を受診してください。
- 顔やあごが目に見えて腫れてきた、腫れが首のほうへ広がっている
- 38度以上の発熱、強いだるさ
- 口が指2本分も開かない、飲み込みにくい、息苦しい
- 痛み止めを規定量飲んでもまったく効かない
宮崎市内で夜間や休日に受診先を探す場合は、地域の休日・夜間診療の案内窓口や歯科医師会に問い合わせると、対応している医療機関を案内してもらえます[1]。
歯科医院での検査と治療の流れ
歯科医院では、まず痛みの原因となっている歯と、その状態を調べます。一般に、問診、視診、レントゲン撮影、歯を軽くたたく検査(打診)、冷たい刺激や電気で神経の反応を調べる検査などを組み合わせて診断します。
診断の結果に応じて、治療は次のように進みます。
- 神経を残せる段階(可逆性歯髄炎):むし歯を取り除き、詰め物で修復します。神経を保護する薬を使うこともあります。
- 神経を残せない段階(不可逆性歯髄炎・神経の壊死):麻酔をして炎症を起こした神経を取り除き、根の中を清掃・消毒する根管治療を行います。初回の処置で強い痛みは多くの場合大きく軽減します。根管治療は数回の通院が必要で、終了後に土台を作り、被せ物(クラウン)を装着します[4]。
- 根の先に膿がたまっている場合:根管治療で膿の出口を作り、腫れが強ければ切開して膿を出すこともあります。腫れや発熱を伴う場合には抗菌薬を処方することがありますが、薬だけで治るものではなく、原因の歯の処置が必要です。
- 歯を残せない場合:根まで大きく割れている、むし歯が根の深くまで進んでいるなどの場合は、抜歯が必要になることがあります。抜歯後は、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどで噛む機能を回復します。
MSDマニュアルの解説では、可逆性歯髄炎はむし歯の除去と修復で歯髄を温存できるのに対し、不可逆性歯髄炎では根管治療か抜歯が必要とされています[4]。早く受診するほど神経を残せる可能性が高く、治療回数も少なくて済みます。
「痛みが消えた」は治ったサインではありません
強い痛みが続いたあと、ある日を境に急に痛みが消えることがあります。これは炎症が治まったのではなく、神経が壊死して痛みを感じなくなった状態であることが少なくありません。神経が死んだ歯の内部では細菌の感染が続き、やがて根の先に炎症や膿がたまり(根尖性歯周炎・根尖膿瘍)、再び腫れや強い痛みが出ます。この段階まで進むと、治療の回数が増え、歯を残せる可能性も下がります。痛みが消えても、必ず歯科医院で確認を受けてください。
当院の急な痛みへの対応
当院では、強い痛みがある、詰め物が取れたなど急を要する場合は、可能な限り随時対応しています。ただし予約優先制のため、来院前に一度お電話(0985-78-0118)でご連絡いただけると、よりスムーズにご案内できます。
痛みへの配慮は、当院が一般歯科で大切にしていることの一つです。麻酔注射そのものの痛みを抑える工夫を行い、患者さんのペースに合わせて治療を進めます。また、可能な限り「削らない・抜かない」ことを基本に、感染している部分だけを最小限に取り除き、進行したむし歯でも根管治療によって歯を抜かずに残すことを目指しています。歯の神経を残せるかどうかは状態によりますので、検査の結果と選択肢をご説明したうえで、納得していただいてから治療を始めます。一般歯科の詳しい内容は一般歯科の診療案内ページをご覧ください。
根管治療のあとの被せ物について
神経を取った歯は、治療後に土台を立てて被せ物をするのが一般的です。神経を取った歯はそのままでは割れやすいため、被せ物で全体を覆って保護する必要があります。被せ物には保険診療のもの(金属の冠、条件を満たす部位ではCAD/CAM冠と呼ばれる白い冠)と、自由診療のセラミックやジルコニアがあります。
自由診療の被せ物については、当院の公式サイトに費用の一覧を掲載していないため、ここでは一般的な費用の目安をお伝えします。セラミックやジルコニアの被せ物は1本あたりおおむね8万〜18万円程度(税込)が一般的な目安で、材料、部位、医院によって幅があります。当院の費用は、診察のうえで歯の状態と選択肢とあわせてご案内します。被せ物の治療は型取りから装着まで通常2〜3回の通院が必要で、根管治療の回数は別に数回かかります。主なリスクとして、被せ物が外れる・欠ける、神経を取った歯が割れる、歯ぐきとの境目から再びむし歯になる、といったことがあり、保険・自由診療にかかわらず定期的な検診が必要です。
当院は保険診療と自由診療の違いをそれぞれのメリット・デメリットとあわせてご説明し、患者さんに選んでいただいています。無理に自由診療をお勧めすることはありません。被せ物の種類や通院回数については、「セラミックの被せ物は何回通う?治療の流れ・期間・仮歯の過ごし方」でも解説しています。
よくある質問
痛み止めを飲んで眠れたら、受診しなくても大丈夫ですか?
受診は必要です。痛み止めは炎症の痛みを一時的に抑えているだけで、むし歯や神経の炎症が治ったわけではありません[1]。痛みが落ち着いている間に受診したほうが、神経を残せる可能性が高く、治療も短く済みます。
夜中に痛み出しました。すぐに救急へ行くべきですか?
歯の痛みだけで、顔の腫れや発熱、口の開きにくさがなければ、痛み止めと冷却で朝まで様子を見て、翌日に歯科医院を受診する対応で問題ないことがほとんどです。顔の腫れが広がる、高熱がある、飲み込みにくい・息苦しいといった症状がある場合は、感染が広がっている可能性があるため、夜間でも救急の受診が必要です。
歯の神経を取ると、その歯はどうなりますか?
神経を取ると痛みは感じなくなりますが、歯に栄養が届きにくくなり、割れやすくなります。そのため治療後は被せ物で歯全体を保護するのが一般的です。神経を取った歯も、被せ物の境目からむし歯になったり、根の先に再び炎症が起きたりすることがあるため、治療後も定期的な検診が必要です。
冷たいものがしみるだけで、夜は痛みません。この場合も急ぎますか?
刺激を離して1〜2秒で痛みが消える段階であれば、不可逆性歯髄炎より手前の可能性があり、救急で受診する必要は通常ありません[3]。ただし、しみる症状の背景にむし歯があれば進行します。1〜2週間以内を目安に受診してください。しみる症状の見分け方は、当院のブログ「冷たいものが歯にしみる|知覚過敏と虫歯の見分け方と受診の目安」で詳しく解説しています。
宮崎駅の近くで、仕事帰りに診てもらえますか?
当院の診療時間は月・火・木・金が9:00〜13:00と14:30〜18:30、土曜が9:00〜13:00と14:00〜17:00で、水曜と日曜は休診です。当院は宮崎駅近くのKITENビル2階にあり、お仕事帰りの受診にもご利用いただいています。急な痛みの場合は、来院前にお電話いただけると当日の受け入れ状況をお伝えできます。
まとめ
- 夜にズキズキする歯の痛みの多くは、むし歯が神経に達した歯髄炎が原因です。自発的に痛む、温かいもので痛みが長引く段階は、神経を残せない可能性があります。
- 今夜は痛み止めを正しく使い、痛む側で噛まず、患部を清潔にして頬の外側から冷やしてください。飲酒・長風呂・運動は避けてください。
- 翌日〜数日以内に受診を。顔の腫れ、発熱、開口障害、飲み込みにくさがあれば夜間でも救急へ。
- 痛みが消えても治ったわけではありません。神経が死んだ歯は根の先の炎症へ進みます。
夜の歯の痛みでお困りの方へ
急な痛みは、我慢するほど治療の選択肢が狭くなります。当院では急患に可能な限り対応していますので、来院前にお電話(0985-78-0118)でご連絡ください。WEB予約もご利用いただけます。他院で治療中の歯が痛む場合は、治療経過を把握しているその医院にまず連絡することをおすすめします。連絡がつかない場合や、夜間・休日は地域の救急窓口にご相談ください。
この記事を書いた人
野海 健太(医療法人隆和会 クレアデンタルクリニック宮崎駅 歯科・矯正歯科 院長)
九州大学歯学部卒業。宮崎大学医学部感覚運動医学講座顎顔面口腔外科学分野に入局後、医療法人隆和会 谷山歯科医院勤務・理事を経て現職。日本口腔外科学会、日本口腔科学会、日本口腔ケア学会、日本咬合学会、日本インプラント学会、日本歯科医師会に所属。
医院名:クレアデンタルクリニック宮崎駅 歯科・矯正歯科 住所:〒880-0811 宮崎県宮崎市錦町1-10 宮崎グリーンスフィア壱番館(KITEN) ビル2階 電話:0985-78-0118
公式サイト:https://smile-crea-dental.com
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状がある場合は歯科医院を受診してください。
参考資料
以下の資料は、本環境の制約により検索結果に表示された抜粋の範囲で内容を確認しました。全文の閲覧は未実施です。
- 日本歯科医師会「テーマパーク8020 お口の119(歯が痛い)」 https://www.jda.or.jp/park/rescue/index.html (ズキズキする痛みの原因、応急対応、痛み止めだけでは治らないこと、早めの受診の根拠)
- 日本歯科医師会「テーマパーク8020 非歯原性歯痛」 https://www.jda.or.jp/park/trouble/toothache-fromother.html (片頭痛・群発頭痛による歯痛の根拠)
- MSDマニュアル家庭版「歯髄炎」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/18-口と歯の病気/歯の病気/歯髄炎 (可逆性・不可逆性歯髄炎の見分け方の根拠)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「歯髄炎」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/15-歯科疾患/一般的な歯科疾患/歯髄炎 (自発痛・温熱刺激後の持続痛、痛む歯の特定の難しさ、治療方針の根拠)
- 日本歯科医師会「歯医者さんに行こう! 放っておかないでこんな症状」 https://www.jda.or.jp/go/ (「歯がズキズキする」が受診すべき症状であることの根拠)